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The lens on X100 series

今までのX100シリーズではスペックよりも使い勝手の向上に力が注がれて来た。しかし、ユースケースを考えた場合に足りないものがまだ残っている。その一つはレンズに距離指標を付けること。距離指標はマニュアルフォーカスでリズムよく撮影するのに欠かせない機能だ。これは全くもって個人的な要望に過ぎないのだが期待して待っていたい。

さて、ここではX100シリーズを四代に渡り支えてきた23mmF2のレンズを振り返ってみる。

画角

レンズはシリーズいずれも単焦点固定式の23mmで、センサーはAPS-Cフォーマットでライカ判に換算すると35mm相当となる63°の画角だ。

この画角は風景からポートレイトに至るまで撮影しやすく万能であると言われており、実際かなりのシチュエーションをカバーできる。パースがつきすぎることもなく、場の雰囲気を壊してしまうこともない。旅に一本だけ単焦点レンズを持っていくのなら35mmというのは悪くない選択だ。

F-number

X100シリーズのレンズは開放F値が2。登場の頃から3-StopのNDフィルターがビルトインされており、多くのシーンで開放をつかうことができた。さらにX100Tからは電子シャッターも使えるようになり、実質、自分の好きなときに開放で撮れるようになっている。高感度耐性の高さも含め、今や絞り値の決定は撮影者に委ねられるといっていい。

パンケーキレンズという誤解

よくX100シリーズの薄いレンズを交換式のレンズとしても使いたいという声が聞かれる。しかしX100シリーズのレンズは見た目こそ薄く感じるものの、構成としてはそれほど小さく薄いものでもない。

知っての通り、レンズは絞り環とフォーカスリングを持たせるため非沈胴式が選択されている。さらにAPS-Cという比較的大きなセンサーフォーマットと組み合わせてなお画質とコンパクト性を両立させるために開発チームは試行錯誤を重ね、出来上がったものは6群8枚構成、後玉の口径が前玉のものより大きいという特徴的なものになった。よくレンズ固定式はセンサーにレンズを最適化できるというが、チームは逆にセンサーからもレンズにアプローチしており、フォトダイオード表面に敷き詰められるマイクロレンズアレイの位置を調整して最終段階のテレセントリック性を高めた。
そうして限界ギリギリを攻め、稼いだバックフォーカスはわずか5.6mm。X100シリーズはレンズとセンサーがほぼ一体化していると言っても過言ではない。センサー位置を示す指標は背面LCDのすぐ前に位置しており、X-Pro2やX-T2のものと比べてみるとかなり後ろに位置しているのがわかるはずだ。

これらを考慮すると見た目とは裏腹に決して小さく薄いレンズではないことがわかる。レンズはかなりボディに飲み込まれていると考えた方が良いだろう。

開放マクロと逆光時の弱み

開放かつマクロ領域では球面収差が発生し、かなりふわりとした写りとなる。リリース当初からマクロ域では絞るようにとのメッセージが開発側からも出ていたが、今やこのマクロ域における球面収差はX100シリーズを非難する者たちに向けた生贄だ。数あるレビューサイトにおいてこの点が「Cons」のリスト中で指摘されないことはない。しかし、こうも長く指摘され続けるとは開発者たちもさぞ苦笑いしていることだろう。
ほか、逆光で撮ろうとした時に太陽の位置によってはフレアやゴーストが現れる。もちろんそれを好まない人もいるが個人的にはそれほど気にしていない。というのもわずかに角度や位置を変えれば抑えられるからで、オールドレンズのように扱いにくいものではないからだ。逆に、ポートレイトを撮るときなどにフレアによるコントラストの弱さを活かすという使い方もあるだろう。

換算35mmの難しさと楽しさ

気をつけないと汎用性の高さゆえに凡庸な写真になってしまうのが35mmの難しさ。
しかし、昨今の研究結果が語るとおり制約は創造性を後押しするものだ。入りきらないものをどう収めこむか、小さくなりがちな被写体をどう印象付けるか。ボケや圧縮効果に頼らず、どう背景を整理してクリーンなイメージにするか。焦点距離が固定されているが故の思考が始まる。
視点を転換し、一歩下がって二歩寄って、構図を変え、場面を自分なりに切り取る。苦悩がそのまま写真に映し出されていく。ファインダーを覗いているうちにアタリの瞬間を見つけてホッとする。右往左往しながら撮り続け、徐々に被写体の捉え方が身に馴染んでくる。

X100シリーズを手に入れてしばらくすると、今まで手に入れたどんなカメラよりも「どう撮るか」ということを考えながら撮影していることに気付くのではないだろうか。

Yusuke Shinozaki